燭天使のアリョーシャと恋の物語

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いつもなら一心不乱に空中イラストを描いている。シャボン玉の絵がふわふわと本物のように飛んでいく。しかし、今日に限って、鳶色の瞳は石畳の一点に向けられている。 「わたしに居場所を教えてくれるの? あなたはだぁれ?」 彼女はスカートのポケットから絵筆を取り出すと、そっと地面に落とした。 「警戒警報! 警戒警報! 第664代燭天使が脱落。繰り返す、次世代天使候補が脱落!!!」 「情操教育課程の事故。ただちに身柄を確保せよ」 アリョーシャが自我地平線を見失ったことはすぐさま天空に報告された。 ふくよかな婦人たちが雲のはざまで翼をひろげた。 「能動天使のみなさん! 出番ですよ」 彼女の呼びかけに応じて、きつい目をした天使たちが寄り集まった。 「また駄目だったの?」 「最近の子は、根性ないわぁ」 「なんか、だんだん劣化してなくね?」 「顔面偏差値、右下がりだし」 「つか、あたいらを抜擢したほうがいいんじゃない?」 女たちは勝手な意見を並べ立てた。 すると、中年女性がパンパンと手を叩いた。 「はいはい。みなさん、あとで聞きますから、ちゃんとお仕事しましょうね」 不平不満が終わらない。 中年女は機関銃のように手拍子を打った。 すると、能動天使たちは雷で撃たれたように姿勢を正した。 「わかっ……」 「ちょ、やめて」 「うるさいババアね」 「痛っ!」 「わかったわよ。しつけーな」     
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