1人が本棚に入れています
本棚に追加
いつもなら一心不乱に空中イラストを描いている。シャボン玉の絵がふわふわと本物のように飛んでいく。しかし、今日に限って、鳶色の瞳は石畳の一点に向けられている。
「わたしに居場所を教えてくれるの? あなたはだぁれ?」
彼女はスカートのポケットから絵筆を取り出すと、そっと地面に落とした。
「警戒警報! 警戒警報! 第664代燭天使が脱落。繰り返す、次世代天使候補が脱落!!!」
「情操教育課程の事故。ただちに身柄を確保せよ」
アリョーシャが自我地平線を見失ったことはすぐさま天空に報告された。
ふくよかな婦人たちが雲のはざまで翼をひろげた。
「能動天使のみなさん! 出番ですよ」
彼女の呼びかけに応じて、きつい目をした天使たちが寄り集まった。
「また駄目だったの?」
「最近の子は、根性ないわぁ」
「なんか、だんだん劣化してなくね?」
「顔面偏差値、右下がりだし」
「つか、あたいらを抜擢したほうがいいんじゃない?」
女たちは勝手な意見を並べ立てた。
すると、中年女性がパンパンと手を叩いた。
「はいはい。みなさん、あとで聞きますから、ちゃんとお仕事しましょうね」
不平不満が終わらない。
中年女は機関銃のように手拍子を打った。
すると、能動天使たちは雷で撃たれたように姿勢を正した。
「わかっ……」
「ちょ、やめて」
「うるさいババアね」
「痛っ!」
「わかったわよ。しつけーな」
最初のコメントを投稿しよう!