燭天使のアリョーシャと恋の物語

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ちょうどそのころ、ババアは雲のソファーに寝そべって部下たちの働きぶりを監視していた。 彼女には能動天使たちを査定して賞罰する義務がある。 そして、規律の運用について人一倍詳しい。 燭天使の逸脱行動について該当項目はないか、記憶の底をまさぐった。 しかし、調製過程にある天使候補には、そもそもこのような脱走を企図する知恵は刷り込まれておらず、それを前提とした罰則規定もない。 「調整をしくじったとか、劣化したことで想定外の悪意が芽生えたとか考えられませんか?」 ヤンキー天使たちが狼狽えるババアに助言する。さすがに昇格をうそぶくだけの能力はあるようだ。 「禁断の実を食べること以外には考えられないわ」 ババアはそこまで言って、あっと驚いた。そして、みるみるうちに青ざめる。何か思い当たるフシがあるようだ。 僕はサマエル、と少年は名乗った。 「貴女はなに? あたしのような燭天使とはちょっと違うようだけど。と、いうか生き物なの? それより、さっきからあたしの背中に当たるものは何?」 アリョーシャは初めて出会う相手に戸惑いをおぼえた。同時に胸がドキドキする。とても不思議で心地よい。 「僕は僕さ。眷属は天使のサポート役だ。君たちといっしょに住めない。だけど、君のことはよく知っているよ」 「あたしが?」     
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