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アリョーシャが翔けよると、ふたたび閃光が彼女を阻んだ。
「そこまでよ」
眼が慣れると、能動天使たちに囲まれていた。全員が弓をつがえている。
「僕のことは心配しないで!」
サマエルは天使に抱きかかえられ、彼の頭に照準が向いている。
「おとなしく懲罰を受けなさい。貴女のかわりいくらでもいるもの」
能動天使のリーダーがにじり寄る。
「誰だってあたしを止められない!」
アリョーシャはそういうと、体当たりをかました。勢いよく羽ばたいてサマエルをもぎ取る。
すぐさま、火矢が襲ってくると覚悟した。
しかし、後ろから追いかけてくる者はいない。
「と……当面は大丈夫だと思う。君への餞別だ」
アリョーシャの胸でサマエルは途切れ途切れに言った。
「喋らないで。じきによくなるわ。地上には治してくれる人がいるんでしょ」
「医者のことか? 原始的な祈祷師ですら生まれるのは何万年も先だ」
サマエルはきっぱりと否定した。
「だって、だって、このままじゃ死んじゃう」
アリョーシャは生れてはじめて他人をおもんばかる感情を得た。
「心配する気持ちが芽生えたんだね? 感情は知能を進化させる。他人の痛みが共感できなくては共同歩調が取れないし、尊重する能力がないと自分と他人を混同するからね。よかった」
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