燭天使のアリョーシャと恋の物語

8/11
前へ
/11ページ
次へ
アリョーシャが翔けよると、ふたたび閃光が彼女を阻んだ。 「そこまでよ」 眼が慣れると、能動天使たちに囲まれていた。全員が弓をつがえている。 「僕のことは心配しないで!」 サマエルは天使に抱きかかえられ、彼の頭に照準が向いている。 「おとなしく懲罰を受けなさい。貴女のかわりいくらでもいるもの」 能動天使のリーダーがにじり寄る。 「誰だってあたしを止められない!」 アリョーシャはそういうと、体当たりをかました。勢いよく羽ばたいてサマエルをもぎ取る。 すぐさま、火矢が襲ってくると覚悟した。 しかし、後ろから追いかけてくる者はいない。 「と……当面は大丈夫だと思う。君への餞別だ」 アリョーシャの胸でサマエルは途切れ途切れに言った。 「喋らないで。じきによくなるわ。地上には治してくれる人がいるんでしょ」 「医者のことか? 原始的な祈祷師ですら生まれるのは何万年も先だ」 サマエルはきっぱりと否定した。 「だって、だって、このままじゃ死んじゃう」 アリョーシャは生れてはじめて他人をおもんばかる感情を得た。 「心配する気持ちが芽生えたんだね? 感情は知能を進化させる。他人の痛みが共感できなくては共同歩調が取れないし、尊重する能力がないと自分と他人を混同するからね。よかった」     
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加