燭天使のアリョーシャと恋の物語

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「何が嬉しいの? わたしは胸が張り裂けそう。どうしたらいいの?」 アリョーシャは大粒の涙をながした。 「君に一人で生きていけなんて残酷なことは言わないよ。ウウッ」 「黙ってて!」 息も絶え絶えのサマエルを歩道に寝かせると、バサバサと天使が降りてきた。石畳を挟んで三人のアリョーシャが向き合う。 「こんにちは、664代目のアリョーシャ。あたしは665代。この子は末代のクローンよ」 もう一人のアリョーシャが三人目を紹介した。 「あなたたちは?」、きょとんとする664代燭天使。 「呼んだのはあたし。あんたと666も」と665代目が言う。 「僕が成長を加速させたんだ。君たち三人はこれから地上で手を取り合って……」 サマエルがそういうと、がっくりとこと切れた。 「サマエル!」 泣き崩れる664を665が支える。 「彼がパンドラカプセルを開封したの。諸悪の根源よ。悪とは何かを天使が学ぶための教材だった。それを一気に開放したものだから……」 ドンっと大きな音がした。巨大なつり橋の橋脚が基礎から雲霞のように崩れ、ボロボロになった吊り橋部分もクズグズに燃え尽きていく。 「えっ、えっ?」 戸惑う664代に二人の燭天使が抱き着いた。 「時間がないの。664は私のお嫁さんになってくれるわよね?」     
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