山裾の家

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ここは、僕の家である。空き家をリフォームして住んでいる。 以前は、東京のオフィス街で働いていた。一日中ディスプレイを見て過ごす仕事は、ブルーカラーから見れば楽になって見える。しかし、一日中画面を見ると目が痛い。ブルーライト浴びるだけでもしんどいのに、人間関係の柵がそれに輪をかける。 「おまえは何をさせてもダメだ! こんなに使えない奴は初めてだ」と自分を棚上げしてみんなの前で叱られてはたまったものではない。なんで僕が叱られるのかさっぱりわからない。そういう日は、退社後に一杯飲んでほろ酔い気分でマンションの自室へ戻るのだ。 部屋から見える景色も人工的なものばかりで、とてもマイナスイオンを浴びる環境ではない。部屋の中も家電製品に囲まれて、寝ていてもプラスイオンを浴びる。 寝ても覚めても人工的な環境では、人間もロボット化していく。自分が叱られないように今日もビクビクしながら一日をやり過ごすのが5、6日続く。そして、僕が能無し上司のターゲットにされたら、帰りに安酒を飲んで帰る。     
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