山裾の家

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ある日、もっと意地悪な上司が異動で来た。そいつは、女の腐った奴である。いや、パートのおばちゃんの方がもっと値打ちがある。40歳過ぎたオッサンなのに、いつまでも本人が忘れてしまった事を持ち出してその件で特定の人を公開処刑するのだ。仕事ができないオッサンがやるこの手にみんなが嫌気をさしてドンドン辞めていく。 遂に僕がターゲットにされたのだ。あまりにも理不尽なやり方にこれ以上ついていけなくなったので、そいつに辞表を出した。退職金を貰った僕は、賃貸で住んでいたマンションを引き払い、田舎ヘ引っ越した。 貯金と合わせて手に入れた空き家は蜘蛛の巣だらけで、すぐには寝られない。部屋の中にあったガラクタを始末し、掃除をして人が入れるようにした。 床や壁など所々傷んだ部分があったので、ホームセンターで材料を購入して自分で修繕した。風呂・トイレは業者さんに頼んで現代仕様にした。 こうして僕の家が手に入った。窓から遠くに海が見える。周りに植えてある針葉樹林は夏の暑さを遮る。夢に見たマイナスイオンの環境を手に入れた僕は、ノートパソコン一つでこの家で仕事をするようになった。 株の売買やライターと収入源を確保した僕は、自然の中で暮らし始めた。しかし、コンビニへ行くにも車を使わないとならない。そんな時に、子猫が迷い込んできた。近所に猫を飼っている家がないから、誰かがこの辺りで捨てたのに違いない。僕は、その子猫を家に招き入れて飼うことにした。
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