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《1》エピローグ・自慰
元禄14年(西暦1701年)
上州渋川郷神里の城下町
・・・氷雨混じりの寒い夜更け
・・・呉服問屋大森屋に役人がやって来た
「……大森屋、御上の御用だ、娘はいるか、隠し立てをするとためにならんぞ、すぐにここに連れて来い」
表口土間で鬼同心の鬼頭源三郎が大声で叫んだ、奥座敷から琴の音が聞こえていた
「お、お役人さま、娘に何のご用で御座いましょうか」
大森屋の主人久左衛門の顔は青ざめていた、娘に御上の御用とは、ただ事ではない、可奈は久左衛門が五十才を過ぎて授かった一人娘である、目の中に入れても痛くないほど溺愛していた
娘がお役人様に目を付けられるような悪いことをするなど考えられないことだった
「黙って娘をここに連れて来い、お前の娘が役者の巳之助と乳繰り合ってるのを見た者がいるんだ、しかも、巳之助は押し込み強盗一味の仲間だったらしい
お前の娘にも押し込み強盗の嫌疑がかかってるんだ、つべこべ言わず連れて来い」
「そ、そんな、……娘に限って、そんな大それたことができるわけがありません、何かの間違いです」
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