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なんといっても、今日は特別な日。
私、勝浦町子が就職を機に、一人暮らしを始める日だからだ。
実家暮らしは快適だったけど、友達や彼氏を気軽に呼ぶことはできなかった。
だけど、これからは・・・
「呼びたい放題~っと!」
鼻歌混じりでダンボールのガムテープを剥がしてると、備え付けのクローゼットが、勢いよく、バーン!!と開いた。
「ギャア!な、何っ。」
クローゼットにはまだ何も入れていない。
なのに、突然、内側から押し開けるようにして扉が開いたのは、一体どういうことなのか?
死ぬほど怖いが、中を確かめたい・・・。
ソロリとクローゼットに近づいた。
中は汚れ一つ無い、マットなホワイトの内装で、実はこの備え付けのクローゼットが気に入って、この物件に決めたのだ。
「う~ん、建てつけが悪いのかな・・・んっ?」
クローゼットの天井から、紙がヒラヒラ~と落ちてきた。
拾い上げて確かめると、墨で描かれた、長い髪の女の顔だった。目が大きく、なんだか不気味で、禍々しい。
「うわ・・・これちょっとシャレになんない。」
気持ち悪くなり、一刻も早く、部屋を出たくなった。
スマホを取り出し、実家に電話しようとした時、絵の女の髪がシュルシュル~と伸びて、手にしたスマホを弾き飛ばした。
「ケ、ケケケ、ケケッ。」
顔を歪めて、女が笑い出した。
「ギャーーーー!いやぁ!」
町子が悲鳴を上げると、その口に女の髪が押し込められた。苦しくて、髪を掴んで引っ張り出そうとしたが、グングン体内に侵入していった。
やがて、内臓を突き破り、町子は絶命した。
髪に描かれた女の顔はいつのまにか町子の顔に変わり、再びクローゼットの天井に貼りついた。
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