人生モブだった男。歴史の表舞台に立つ。

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「ははっはははは!題名通り本当に騙されるところだった。まさかこの広い世界にこれほどまで〝モンティ〟に似た人物がいるなんて想像もしなかったんだからなあ!」  今次大戦最高の、そして余りにも馬鹿げた特大の欺瞞作戦を思い付いたレイドは、デスクにサッと両足を乗せて組み、腹の上で両手の指を絡ませ、件(くだん)の新聞を自分の顔に乗せた状態で声を曇らせながら、体を大いに揺らせて捩れんばかりの大笑いしたのであった。  写真の人物の名は≪M・E・クリフトン・ジェームズ≫ 戦前は売れない舞台俳優にして、今はパッとしない年嵩のいった後方勤務の陸軍少尉。 彼はその容貌といい背格好といい、イギリスが誇る〝砂漠の狐ロンメルを打ち破った英雄〟《バーナード・モントゴメリ陸軍大将》に、余りにも、そう余りにも似すぎていたのだ。 作戦名【コッパ―ヘッド】 これまで一度として舞台で主役を演じたことが無かった一介のモブ役者が、モンティに成りすまし、大英帝国とアメリカが威信をかけた国家戦略【オーバーロード作戦・大陸反攻作戦】からナチス・ドイツとヒトラーを目を逸らさせ、その意識をあらぬ方向へと欺いてやろうとした大舞台の、その主演を務めることになってしまった瞬間であった。
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