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それからの俺の人生は一変した。あの「人格補正スーツ」のおかげで、俺は第一志望ではなかったものの、それなりの有名企業に就職することができた。入社してからも、大事な商談では必ずそのスーツを着て行ったら、全部の商談で取引成立。俺は同期の中でもトップの営業成績をあげた。あの店員の中年男性店員が言っていたことは本当だった。あのスーツを着ると自分でも信じられないくらい自信が湧いてくるのが分かる。しかも、就活も商談も大成功だ。まさに、彼の説明通りだった。
入社して三年目、俺は異例の早さでプロジェクトリーダーを任されていた。しかし、このところ体の調子がおかしい。記憶の一部すっぽりと抜け落ちたかのように思い出せないのだ。それも困ったことに、日中つまり仕事中が多い。プライベートでも交流がある同僚は、それになんとなく気づいてる奴もいるらしく
「あまり無理はすんなよ」
などと、気遣われる始末だ。
このままでは具合が悪い、もしこのことが、上層部に知られれば俺は間違いなくプロジェクトリーダーから外される。そうなれば俺のエリート街道が絶たれる。それだけは避けなければならない。
そして、もう一つ、これはもう誰にも言っていないが、最近は頭の中で声が聞こえる
(俺に変われ、万事うまくやってやるからよ)
(どうせお前には無理だ。エリートでいたいんだろ?俺に変われ)
と。
俺は、このスーツの説明をした、中年男性店員ならどうにかできるのではないかと考え、洋服の赤河を訪れた。
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