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もとより貧しく、他人様の情に支えられて神野グループを築かれた喜一郎様は、決して雄貴様の貴賤育ちに御不満があった訳ではございません。
当時の雄貴様に借金があったことや、まともな職に就いてないなどという個人的なことも、喜一郎様にとって歓迎することではないにしろ、大したことではございません。
それこそ浮子様が幸せであり、この神野家にいる限りは何でもない事でございます。
問題は、、、
浮子様の他に別の女性と以前より関係をお持ちだったことです。
もちろん浮子様はその当時、知る由もありませんでした。
喜一郎様が早々に雄貴様の身辺調査をされてわかったことです。
これは喜一郎様にとって、大変許し難い事案でございました。
こればかりは相手方への圧力や、金銭的な解決で済むと言う類の落とし所ではございません。
喜一郎様は、人として生まれたからには本能を制する貞操観念を極端に重んじておられました。
それは、御自身の家庭環境に由縁するものでしょうか。
詳しくは存じませんが。
実際、喜一郎様は奥様がご存命でいらした間は奥様お一人を貫かれました。
喜一郎様より四つほどお年上の奥様が二七歳の若さでお亡くなりになった後とて、女性関係はございません。
そう、女性関係は、、、。
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