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小雪と桃
ずっと あなただけを見ていた
ずっと あなたのとなりにいた
ずっと ずっと 愛しているから
*** *** ***
「まーた、あんたたちはイチャイチャして。困ったレズだねえ」
カスミにため息まじりに言われて、小雪は申し訳なさそうに微笑んで見せた。けれど、腕に抱き着く桃の手を放そうとはしない。
パソコン実習室の利用時間はあと三十分だけ。校内に残っている生徒はほとんどいないようで、廊下はしんと静かで寒々としている。
中学三年の三学期。みんなとっくに帰って受験勉強をしているのに。カスミだって早く帰りたいだろう。
だが、桃はそんなことは気にもしていないようで、カスミにかわいらしく、にっこりと笑ってみせた。
「レズですけどお。なにか?」
見せつけるように小雪の胸にぎゅっと抱きつく。桃のふわふわした猫っ毛が小雪の首筋をくすぐる。小雪は困り顔をしてみせたが、口元の笑いは隠せない。抱き着かれていることが嬉しくてしょうがないのだと、一目見ただけでわかる。
カスミは迷惑そうに眉を寄せている。カスミがさらに文句を言おうと口を開く前に、小雪が謝った。
「カスミちゃん、ごめんね」
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