エデンの夢

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「書斎で考え事をしてる最中は邪魔しないでくれと言ってたと思うが?」 「よかった、無事ですね。長時間出てこないから悪魔にやられてはしないかと心配になりまして。そろそろ気晴らしはどうですか? 猫のお客さんが来てるんですよ。」 親友は猪久の都合を優先する。猪久にとってはほぼ完全に近いパートナーだったが、唯一猪久を上回って優先するものが猫だ。親友は無類の猫好きなのである。やれやれとばかりに猪久は立ち上がりかけ、はたと立ち止まった。 「ん? 部屋の中にいた俺は明晰夢の中にいるのと同じだ。で、外に猫が来て知らされるまで、俺は知らなかったわけだな。と、すると・・・。」 「何してるんですか、猪久さん!」 猪久は何かに気づこうとしていた。 運命の一日が経過した。猪久の夢の中、和風住宅の茶の間に不似合いな人間離れした美女、ルーシーが現れた。卓袱台を挟んで、座布団の上に腰を下ろす。 「約束通り、答えを聞きに来たわよ。」 「明晰夢では不可能で、現実でのみ可能なこと。見つけたよ」 猪久はルーシーを指差した。 「何のつもり?」 「あんたは悪魔の大親分だ。俺なんかとは比べ物にならないくらい知識があるよな?」 「そりゃあね。この世界の創生も手伝ったくらいだからね」     
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