エデンの夢

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「今のあんたに、たとえば聖書に載ってない『創生こぼれ話』を聞くことは可能だよな」 「教えるかどうかは別として、可能は可能ね」 「そうだ。今のあんたは俺の明晰夢の中の存在じゃないからな。だが、俺の明晰夢の中のあんたの場合はどうなる?」 饒舌なルーシーが黙り込んで目で先を促した。猪久は軽く頷くと話を続けた。 「俺の明晰夢の中のあんたから、俺の知らない新しい知識が得られることはない。俺の明晰夢では、あんたを含めてすべての創造主は俺自身になる。俺の知らないことをあんたに語らせることはできない」 「なるほどね。自分の思いのままになる夢の中にとどまる限り、新たな知識は得られないと」 「そうだ。あんたが店に『エデンの夢』と名付けた理由が今ならわかる気がする」 ルーシーはしばらく満足げに頷いてから口を開いた。 「人間は知恵の実を食べて、結果的にエデンから出ることを選んだ。私の誘惑というきっかけがあったとしてもね」 「閉じられた世界でも思考を深めることはできる。モルペウスもその成果だ。だが、新たな知識を得ることは不可能だ。答えはこれでいいか? ツマらない答えだったかな?」 「いいえ。十分面白い答えだったわ。」     
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