エデンの夢

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「新たな知識は常に自分の外に存在する。それらを手に入れて成長するためには人間は外とつながってなければならない。外界から遮断するオネイロスではダメなんだ」 「私がイブに禁断の身を食べさせたのも同じ理由だったのよ。完成された神の楽園に居る限り、人間は何も考えない。考える必要がないのだから」 「実際、オネイロスに入っている人間は皆がそうなっているのが何よりの証明だな」 猪久の同意に一瞥を寄こしてからルーシーは言葉を続けた。 「聖書には私は傲慢さや嫉妬から行動を起こした事になってるけど。それだけじゃなかったのよ。純粋に好奇心もあったの。創造主様の庇護から離れた人間がどうするのかを見てみたいっていうね。これがあなたの言う『創生こぼれ話』になるかしら」 「ここで俺の質問を拾うか。本当に悪魔のように『狡猾』だな」 「創造主様が人間の成長を眺めるのもこんな感じなのかしらね。人間がここまで成長しているなら私の滅びは近いわね。まあ悪くない『在り方』だったかな」 猪久の前の悪魔は女神のようにやさしく微笑んでいた。     
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