エデンの夢

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「待て。オネイロスがモルペウスを内包したように。創造主がお前を内包することはないのか? 自由意思での信仰を迫る一方で、信じない者、逆らった者、すべてを滅ぼすなら、脅迫となんら変わらないじゃないか。反逆という愚行権を与えたのも他ならぬ創造主のはずだ。神が本当に万能で無限の愛を持つのなら、むしろ反逆した存在すら許容しなけりゃおかしいじゃないか?」 「さあてね。私は今でも創造主様を敬愛しているけれど、創造主様は約束を違えることはない方だから。私は滅ぼされることまで含めて私の役割なんだと思ってるわ。それでもあなたと話ができてよかった。私も『契約』は守るわ。安心しなさいな」 「待ってくれ、俺は・・・」 「そうだ。最初の質問に答えてなかったわね。私が待ってたのは『審判の時』だった。そしてあなたがやってきてしまったわけ。もしかしたらあなたを待ってたのかもしれないけどね。」 猪久のセリフがまるで聞こえていないようにルーシーは最後の言葉を残して視界から消えてしまった。いつもの軽い浮遊感の後で猪久は現実世界へと戻された。 翌日、人類は目覚め、「この20年すべてが夢だった」と結論付けた。人類の中で猪久ただ一人が恐るべき、そして愛すべき悪魔とのやり取りの記憶を有していた。
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