エデンの夢

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結婚など社会的な責任が伴うような「煩わしいこと」も避けられるようになり、出生率が激減した。現実世界での文化の発展は完全に停滞した。アイドルも賭博も、他のありとあらゆる娯楽が下火になった。オネイロスの与える「完全な夢」に比べ、現実はどうしても「煩わしさ」が先に立つ。 金持ちの一部は「夢の世界への永住」を選んだ。コールドスリープとオネイロスを組み合わせ、半永久的に夢の世界の住人となるのだ。資金のない貧困層の中には睡眠薬を大量に飲むなど、誤った方法で目覚めを拒否する者まで現れはじめた。 人々は必要最小限しか働かなくなり、世界に活気がなくなった。生命を維持する分とオネイロスの使用代金さえ稼げればよいという考え方が蔓延した。彼らにとって現実世界での労働は苦痛以外の何物でもなかった。現実世界がそのまま「地獄」になったのである。 「今日は1時間だけバイトするわ」 「現実世界ってのは邪魔くさいことばかりだよな」 オネイロスのもたらす「完璧な夢」の前に人々は堕落する一方だった。そんな中、ルーシーの支配体制に危惧を覚えたごく一部の有志がレジスタンスを結成した。まっとうな手段では圧倒的多数の支持を得るルーシーには対抗できない。もっぱら逃げ隠れしながら寝カフェを襲撃する等のゲリラ的な活動を行ったが、その活動は市民の支持を得られず、むしろ反感を買うのみであった。     
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