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慎重に波長を調整し、猪久はルーシーの観ている夢にモルペウスの座標を合わせた。軽い振動と浮遊感の後、猪久の意識は古風な洋館の応接間に出現した。
「そろそろ来る頃だと思ってたわ。コーヒーと紅茶どちらになさる?」
動画で見たままの人間離れした美人が待ち受けていた。
「え、あれ?意外な反応。もっと驚かれると思ったんだけど。あ、一番いいコーヒーを頼んます」
熱いコーヒーに苦労しつつも一気飲みすると猪久は口を開いた。
「あんた。何者だ? 美貌も才能も富も権力も手にしたあんたが次に何を望む? なぜこんな夢で俺を待っていた? いや、『待っている』のは何か別のことか?」
ルーシーは艶然と微笑んだ。
「思ったより鋭いわね。塵から作られた人形の割には」
「塵?人形?何を言っている?」
「人類にありとあらゆる快楽を与える存在と言えば、結構有名だと思うんだけど。私の名前に憶えはないかしら?」
「ルーシー不破? ルーシーフワ、・・・ルシファー!」
猪久は思わず立ち上がった。
「貴様、その、なんだ。ルシファーなんですか!?」
あわてまくってなぜか敬語になる猪久。
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