エデンの夢

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猪久の脳裏にうろ覚えの聖書の一部が思い出された。たしか創造主とルシファーは人の信仰心を巡って争っている。ルシファーはすべての人類が創造主の恩寵目当てで創造主を信仰していると主張し、創造主はそれを否定している。創造主はこの世でルシファーに好きにさせることでルシファーの説の誤りをすべての存在に知らしめようとしている。 「オネイロスを調査する過程でとても人間の発明とは思えなかったんだが、そういうわけだったのか。」 「普通なら人間の誰かにインスピレーションを与えて発明させるんだけどね。歴史上の天才と言われる連中の天啓ってあるじゃない? あれって実はほとんど私が与えたものなのよ。今回は私らしいやり方じゃなかったけどね。」 「・・・ルシファーとしては人類を一人残らず堕落させなけりゃならんのだな。あまりに分が悪い賭けだと思うがな。」 「そ。創造主様との約束でね。すべての人間を堕落させるために、今回は切り札を使ったというわけ。でも中にはあなたみたいな規格外がいるのよね。どう、私の側につかない? 悪いようにはしないわよ?」 「自慢じゃないが、オネイロスの与える夢の中でも望んで研究してた研究バカだぞ、俺は。誘惑するだけ時間の無駄だ。そんなことよりも人類を夢の世界から解放しろ!」 「私は別にかまわないけど。でも、貴方は間違いなくほとんど全人類に恨まれるわよ?その覚悟はあるの?」 黙り込んだ猪久にルーシーは言葉を続ける。     
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