エデンの夢

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「愚行権といったかしら。愚かなことをやる権利が人間にあることは創造主様も認めているわ。私の誘惑で禁断の身を食べたのが一番最初の愚行権の行使かしらね。」 「それでも。人は現実に向き合って成長していかなけりゃならんはずだ。辛い現実を何とかするのが、人が生きていくってことの意味だ。夢の世界にはそれがない。」 猪久は自分に言い聞かせるようにつぶやいた。 「そう。貴方を気に入ったから最後のチャンスをあげるわ。『明晰夢の中では不可能。でも現実世界では可能なこと』はわかる? もし答えがわかったなら、今回は手を引いてあげる。あ、でも『できないことができない』みたいなツマらない答えだったら、あなたもツマらないことになるから、そのつもりでね」 ルーシーは悪魔のように微笑んだ(実際、悪魔なのだが)。 「明晰夢では不可能で、現実でのみ可能なこと?」 「現実にモルペウスを作れた貴方なら、それくらいわかるでしょ?」 「いや、モルペウスはオネイロスで無数の思考実験を行わなければ、とても完成できなかった。」 「その見方から離れられないなら、明日、あなたはツマらないことになるわよ? じゃあいったんお帰りなさい。あなたがどこに居ても、答えは私から聞きに行くから」 ルーシーがウインクすると猪久はルーシーの夢から弾き出され、レジスタンスのアジトで目覚めた。     
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