エデンの夢

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「猪久さん、大丈夫ですか? 『面会』はどうでしたか?」 心配そうに親友が猪久の顔を覗き込んでいる。 「とんでもないことになった。」 「やはり彼女は『宇宙人』だったんですか?」 「いや、『悪魔』だった。で、謎かけをされちまった。解けなければ多分殺されるわ。」 「は? 『悪魔』ですか? ・・・何か私に手伝えることはありますか?」 「今はないな。今から集中して考えてみる。頼みごとができたら声かけるわ。」 親友は理解を超える内容に目を白黒させていた。猪久は混乱中の親友を押しのけて書斎にこもり「悪魔の命題」を考え始めた。指先で机を一定のリズムで叩く。思考のリズムを持たせるために猪久が行う儀式のようなものだ。 「・・・さて。何から考えたものか。明晰夢の中では神のごとく万能になる。反面、現実世界では俺はチンケな科学者だ。モルペウスの発明ですら、オネイロスに頼らなければ不可能だった。その意味では『できないことができない』は正解なんだが、ダメだって釘刺されちまったし。」 どれくらい思索に耽っただろうか? 遠慮がちに書斎のドアを叩く音がする。邪魔をしないことが気に入っている親友にしては珍しい行動だ。猪久は大声で返事をした。     
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