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俺とオーナーの2人だけだと思っていた今まで。もう1人、鑑定士という美少女が現れたのはつい最近。佐々木 龍生という名前の画家の作品。【薔薇と海】がモチーフの絵を鑑定して欲しい。と言って来たマダムが現れた時だった。結果的には偽物と判断したのだが、この時まで、全く存在すら知らない美少女だった。
彼女の名前は宮野 莉羽。年齢は5歳年下の17歳だと聞いている。彼女も偽名なんだろうか? 詳しい話を聞くことが出来ないまま、バイト終了時刻となり、その後は美少女と全然会わない。故に訊けない。じゃあ。と、オーナーに尋ねようと思ってもオーナーから、彼女が話してもいい、と思わないと話せない。と、言われてしまう。モヤモヤしたものが胸中で渦巻いているのが、今の俺の現状だった。
あのマダムが現れた日から10日。中学生だか高校生だか……。それくらいの年齢の女の子が画廊にやって来た。受付を済ませたその子は、なんだか随分と表情が固い。キョロキョロと周囲を見回している。画廊なので、展覧会も開催する事があるけれど、基本は絵の売買と鑑定になる。
受付の名前は、神田 三春。みはると読むのだろう。彼女は制服姿でバッグを持っている。どう見ても鑑定でも、売る方でも無い。残るは買う方だが……。あまり有名とは言えない佐々木龍生の絵でも、学生の小遣いでは買えない値段。声をかけるべきか、俺は迷った。
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