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今日は特別な日だ。
もう深夜だけれど・・・ほら、聞こえてくる。
アレはゴミ収集車の音楽だ。
ふつうだったら、市の「こーほーし」に書かれている日の朝にしか、まわってこないゴミ収集車。
それが月に一度だけ。深夜にやってくる。
あの聞きなれた音楽を、あたりまえみたいに響かせながら。
もちろん、このことは、「こーほーし」には、書かれちゃいない。
深夜にゴミ収集車が音楽を流しても。
ゴンゴン、うるさい音をたてても。誰も何も言わないし気にかけない。
みんな、実は「あのこと」を知ってるんだ。
ぼくだって知ってる。
3カ月前だったかな。
ぼくのパパとママが大きな黒い袋を深夜に運び出してーーゴミを積み上げている、いつもの場所に置いたんだ。
黒い袋は使っちゃいけないし・・・パパたちが二人で運んだモノは、ふつうだったら収集車が運ぶのを「きょひ」する大きさだったけれど。
それでも収集車は、ちゃんともっていってしまった。
ぼくは最初から最後まで、ずっと見ていたからね。本当さ。
街灯に照らされた車は、まっくろで。
降りてきた作業の人も、まっくろな服を着ていたけれど。それ以外はいつもとおんなじ。
ただ、ゴミを巻き込むーーなんと言うんだろう。
車の後ろの機械は、袋を押し潰すときにスゴイ音をたてていた。
大きな車輪の下に・・・動物を放り込んだら、そーいうのが響いてきそうな。
気持ちのわるい音だった。
ああ、たとえがわるかったかな。
動物ーーそれが犬や猫なら大切だよね。
とても大切だよ。
犬や猫を車でひいたり、電車の前に放り込むなんて。
頭のおかしいヤツが、することさ。
まったくね。
でも。
まあ、そーいう音だったのも確かなんだ・・・・・・・・・・・・。
ぐちゃ
ぶつっ。ぶちッ
ぶちぶちぶち。ぶちゅ
ぐちゃぐちゃぐちゃっ!
バキバキバキバキッ!
そうして。次の日から、ぼくの家にはそれまでいっしょに暮らしていた、おじいちゃんがいなくなったんだ。
おじいちゃんは、ずいぶんボケていた。
どんどん、それがひどくなって。
ぼくもキライだった。
ぼくがもっと子供のときには、まあまあ好きだったんだけれどね。
お金をくれたり。ゲームのソフトを買ってくれたり。
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