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「だから思い出すってんだよ。…えっと、人って言う字を三回飲み込んでだな…」
「えっと、いや、それは緊張を失くす時の…」
「だから黙ってろッ。はい人、人、人、ってテメェ横でゴチャゴチャ言うから間違って『犬』って書いただろうがッ」
「え、…いや、その…すみません…」
・・・・・・・・・・・・。
「続いて取締隊員ホワイト君。証言台へお願いします」
「はい」
颯爽と証言台に立ったのはメガネの知性派お姉さんである。彼女は僅かにずれたメガネをキッと機敏な動作で直し、一瞬ばかり全体を睨んだかと思うと、すぐに天使のような笑みを見せた。
「さあ、どんな質問でも大丈夫ですよ。お願いします」
お姉さんは優しく微笑む。
だが議長席の周辺は、彼女の微笑みとは裏腹に酷く慌てた様子でバタバタとしている。
「どうしました?」
微笑みを崩さずにお姉さんが言う。
「あ、ええ、…隊員の違法長時間労働隠蔽疑惑、助成金の不正受給疑惑、直属の部下であった隊員の不審死問題などなど。ホワイト君に質問する予定だった議員は与野党合わせて3名ほどおりましたが、3人共に本国会に向かう途中で事故に遭い欠席を余儀なくされたとの報告が入って参りました」
「あら、それは大変ね。…では議長。私はこれで終わりでいいのかしら?」
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