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僕はぐっと手を伸ばした。改めて自己紹介といこうじゃないか。
「僕は小金井晴太だ。よろしく夏輝!」
夏輝は僕の手を覆い隠すようにごつい掌で包み込み、固く握った。
「俺は清田夏輝だ。よろしくな、晴太!」
夏輝が今日、初めて僕の名前を呼んでくれた瞬間だった。清田夏輝か。良い名前だ。清田夏輝、清田夏輝、清田……。うん? 待てよ。
「キヨタナツキ?」
思わず片言で繰り返す。夏輝は妖怪でも見る目で僕を見ている。
「あ? どうした。俺の名前は清田夏輝だ。小春に言われなかったのか、俺が弟だってこと」
「ええー!!」
謎解きの感傷が消し飛び、小金井晴太の絶叫が夜気を切り裂いた。
「まあ、そういうことだから。これからよろしくな、晴太!」
夏輝と連絡先を交換する間、僕は放心状態だったようで、意識が戻ったのは走り去っていくマッチョの後ろ姿を見送る段になってからだった。僕が帰りしなに酒を買い直し、結局、しみったれた味を堪能することになったのは言うまでもない。
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