幕間劇

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「すまない、小金井三回生! 隠すつもりはなかったんだ」  大学付近に林立する喫茶店の一つ『クロ』にて、僕による例の報告が終わった後で、清田先輩は開口一番にそう告げた。どうやら桜島が噴火した際のゴタゴタで、うっかり夏輝が弟であると伝えておくのを失念していたらしい。  まあ、そのおかげで僕は夏輝と清田先輩との関係性についてあれこれと思い悩みはしたのだけど、それはこの際どうだって良い。些末な問題である。  あの夜の出来事から二晩が明けていた。色々と考えたのだけれど、やっぱり僕には分からないことがある。何度も謝罪の言葉を述べる清田先輩をなんとかとりなして、僕はそれを思い切ってぶつけてみた。 「夏輝くんと僕を会わせた先輩の意図はなんなんですか?」  そう、そこなのだ。夏輝は、確か自分の頼んだお使いを完遂したのは僕が初めてであるというようなことを言っていた。特に気にしてはいなかったのだが、後になって気付いた。逆に今まで完遂できなかった者たちは、おそらくは恋に打ち破れていった敗残者たちに違いないだろうと。  そうすると、清田先輩が男たちに課した無理難題の条件その一は「弟に会ってくれないか」ということになるだろう。けれど、それだけのために清田先輩を射止めんと奮起した野郎たちが次々に身を引くような事態は起こりうるものだろうか。
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