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竜くんは、確かに信用できるかもしれない。
しかし、愛美さんはまだ分からない。
悠馬くんも同じことを考えたんだ。
竜くんは慌ててきたのに、なぜ、一人になってまで来ることを拒んだ?
女の子一人というのは、この密林に近い島で、不安になって拒否するのが普通。
況してや、初日から人と触れ合ってきた女の子にとって、一人で待機するというのは恐怖との戦い。
だから、水場を教えることはできても、アジトを教えることはできない。
岳のことも、まだ言えない。
「…しかし悠馬の奴、本当に人間を殺すか?よく出来たよな…」
「…でも、悠馬くんに助けられたんだ。感謝するべきだよ。殺さなきゃ殺されてたんだから。」
「そうだとしてもよ…」
「悠馬くんがしてなきゃ、僕が殺してた。」
「…え…」
「そうでしょ。僕一人だったら迷っていたのかもしれないけど、悠馬くんも竜くんもいたんだよ?
迷うなんて出来ない。大事な仲間はお互いで守らなきゃ、この先生きてはいけない。」
「……………」
「例えば、食料のことだってそうでしょ。悠馬くんは君たちに与えることを惜しまなかった。
見捨てる選択肢だってあったはずだ。けど、仲間だからって自ら持っていったよ?」
「……………」
「いいときだけ仲間、悪いところがちらつけば仲間じゃない、そんなの偽善の仲間でしょ。」
浴びた血を洗いながら、竜くんの感情を落ち着かせていく。
…一番心配なのが、竜くんが悠馬くんを見たとき示した悠馬くんの反応だ。
あのとき、僕は竜くんの後ろにいたからどんな表情や視線をしたのか分からない。
でも、悠馬くんの反応である程度の予想がついた。
加えて僕と二人になったときの発言。
…確信した。
彼は、侮蔑、差別、不信、そういう目で悠馬くんを見ていたはずだ。
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