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こういうときは、笑って優しく言いながらも目を本気に。
そして一番最後に笑みを消す。
心理的には常套手段だ。
上手く追い詰められている気分になったのか、唾を飲み込んだ音さえ聞こえた。
そうしているうちに愛美さんの着替えが終わり、大きな荷物を抱えて出発の運びになった。
岳に話しかけるようにしながらも、後ろをついてくる二人にも注意を促す。
「岳。いい?ここからは自分たち以外のテリトリー。
いつ誰が襲ってくるかも分からない。
十分に注意するようにね。君の優れた五感が頼りだよ。」
「うん。」
「僕は君の目になるから、お互い助け合おうね。
それと、水の確保は…やり方覚えた?」
「うん。でも、山水があったら一番いいよね。面倒だし。」
「そう言うなって。みんな同じ環境なんだから。」
「…ちょっと!水の確保ってどうやるの?私たちにも教えてよ。」
「ああ、簡単な方法だよ。海水の蒸留、もしくは朝早くに足にタオルを巻きつけて草むらを走り回る。」
「…走る?」
「そう。朝露をタオルに吸い込ませるんだ。それを絞って火にかければそれで飲み水は確保できる。」
「…冗談じゃないわ!そんなもの飲めるわけないでしょ!」
「…それ以外の方法があるなら教えてくれる?分かってるの?愛美さん。これ、サバイバルのゲームだよ?」
「そうだけど!」
「アジトの近くに水場を見つけていたからラッキーだった。そこから離れたくないならご自由にどうぞ。
さすがに女の子一人じゃ残る気になれないと思うけど。」
「…っ!」
「ここは確かにいい場所だった。これからはこんな天国みたいな場所はないと思っていたほうがいい。ついてくるんなら覚悟したら?」
岳は肝が据わっているな。僕と愛美さんの会話を冷静に聞いている。
真逆の反応は竜くんのほう。
きっと女の子にはすごく優しい男なんだろう。
でもここでは、そんなことが命取りになる。
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