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「…おい。」
「…!!!」
それはある日のことだった。
気配もなく俺に近づき、そして声をかけてきた。
振り返って見れば、どこか目の死んだ男が立っていて。
「…お前、名前は。」
「……なんだ?参加者か?」
「この島にいるんだから、それ以外に何があるんだ。」
「……………」
「名前を聞いているだろ。」
「真鍋…」
「真鍋、何?」
「…公康…」
「…そ。で?一人か。」
「…ああ。」
「どこに行く気だ。」
「…分からないけど…」
「…殺気を漂わせてそっちの方向に行く気なら、悪いが全力で止めるぞ。」
「…え?」
「お前、誰でも殺して生き抜く決意をしたツラしてやがる。
そんなことはどうでもいいが、もしその決意を変えることなくそっちの方向へ行くなら、俺はお前を殺すぞ。行くなら反対方向へ行け。」
俺を殺すわけでもない。
殺そうとも思っていない。
というか、生きることにも必死になっていない。
過酷な状況の中へ放り出された参加者の一人。
なのになぜ。
「…何があるか聞いてもいいか?」
「……………」
「おい!どこ行くんだよ!」
強くなればいいと決めた。
殺していけばいいと決めた。
その決意さえどこかに吹き飛ぶほど、この男が気になった。
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