未知の恐怖

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フキの葉。 …いや、皿がわりにしたフキの葉だ。 中には焼いた魚と白飯。 思わず腹が鳴って。 それを聞くと、フッと笑みを浮かべた。 「…食え。」 「え?」 「食わないとバテるぞ。先は長い。」 俺にそれを差し出す。 素直に受けとると、男は茂みに消えていった。 茂みと飯を交互に見た。 なぜ俺を世話するようなことをするのか不思議だったからだ。 でも、考えても答えは分からない。 それに、男の言う通り、先は長いしバテたら生きられない。 死にたくない。 死にたくない。 そう思って夢中で食べた。 箸なんてないから手で犬食い。 母さんに見られたら、絶対に怒られる。 …ここには母さんはいない。 楽して金を稼ごうなんて思った俺がバカだった。 母さんにもう一度会えるまで生き延びなきゃ。 「お前、なぜ俺をつけるんだ。早くどこかに行けよ。」 「……………」 「俺といたら危険だぞ。」 食い終わると、茂みから出てきた男はそう言ってきた。 昨日会ったときのような怖さは感じなかった。 「…危険って?」 「邪魔をしたら躊躇なく殺すぞ。俺は既に人を殺したからな。 生きるためには殺す。それがここのセオリーだ。」 「そんなの…多分みんなやってる。メールで送られてくるじゃん。」 「そうだ。だからお前も」 「あんた、好きで殺したわけじゃないと思う。それは俺の勘だけど。…俺が追ってきてるの知ってたんでしょ?なのになんで殺さなかった。」 「…会ったときほどの殺気はないし、俺をつけているなら逆に監視も出来るからな。 あっちの方向さえ行かなきゃ文句はない。」
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