未知の恐怖

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男は深く溜め息を吐いた。 「勝手にしろ。 でも俺は、もう覚悟を決めた。 殺さなきゃいけない奴は殺す。 それはお前も例外じゃないぞ。俺の意思と反するなら、躊躇なく殺すからな。」 …どうしてこんな言い方をするのか。 俺を殺す気なんてないくせに。 「死にたくない。…絶対に死にたくない。」 「……………」 「俺の母さん、…病気で入院してるんだ。何度も手術して、金がなかったから欲しくて応募した。 …こんなゲームなんて知ってたら…応募したこと後悔した。母さんに生きて会わなきゃ。」 「……………」 なぜ自分のことを話したのか分からない。 ただ、男は黙って俺の話を聞いていた。 「お前の事情はよく分かった。でも俺には関係ない。死にたくなければ生き抜け。 三ヶ月乗りきればここから出られるし、母親にも会えるだろ。会うために自分が何をするべきか考えろ。」 ぶっきらぼうに聞こえるが、どこか同情に似たものも感じた。 …こいつ、それほど悪い奴じゃないかもしれない。 そう思い始めたとき、男が空を見上げた。 なんだ?と眺めていると、遠くから音がする。 …たくさんのヘリだ。 米粒ほどだったヘリは次第に近づき、上空からたくさんの袋を落としていった。 それらが去ると、お互いの携帯が鳴り響いた。
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