未知の恐怖

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ベタベタがとれ、気持ち良くなったところで俺も海岸の方へ向かう。 火を起こしたその脇に、枝に突き刺さった魚が数匹。 「…悪いな。今朝、俺の米は尽きたんだ。魚しかないが、これ食って休め。」 「…え、……ありがとう…」 「フッ。…すんなり出たな。その言葉。 俺も水を浴びてくる。焼けたら食って寝ろ。」 自分だって疲れているはずなのに、俺の世話を優先してくれるこの男。 なんでも知っていて。 それでいて冷酷で。 凄い切れ者で。 それでいて脅すような奴で。 優しくしてくれて。 簡単に殺すと言ってくる男で。 …もっとこいつのことを知りたいと思った。 男が海から上がり茂みへ戻って出てくるまで15分。 焼けた魚を食べず、火から少し遠ざけて待つ。 「…なんだ。食わないのか。」 「あんたを待ってたんだよ!分かれよ!」 「……………」 「…っ!…いただきます!」 「……………」 きっとこいつは喋ることが苦手な奴だ。 必要以上に喋ろうとはしない。 たまに出てくるこの無言の時間。 「……何見てんだ!あんたも一緒に食うんだよ!」 「……………」 魚を差し出せば、少しだけ表情が和らいだ。
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