未知の恐怖

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そう言うと、俺に目を移した。 「俺が怖いか。」 「怖い…とは、思わないかな。」 「お前を殺すとさんざん言ってた男だぞ。」 「それは怖ーよ!…でも、なんか、本気じゃないって分かってる感覚かも。」 「でも俺は、お前があいつらにとって害になると思ったら躊躇なく殺すぞ。」 「……害にならないって分かってるから、俺のためにいろんなことしてくれてんだろ?」 「……………」 「別にいいよ。それで。 俺はただ生きられればいいって思ってただけ。 そのために強くならなきゃって思ってただけ。」 「俺はお前を信用してる訳じゃない。」 「それも分かってる。」 「覚悟がない人間は、ここで生きられない。」 「……………」 …覚悟、か。 そうだよな。このゲーム、生きるのも殺すのも守るのもすべてが覚悟。 男は簡単に言うが、相当な覚悟をもってゲームに挑んでいると分かる発言だ。 俺も覚悟を持たなきゃ。 ハイリスクハイリターンの覚悟。 それはミスれば死と直結する。 でもミスらなければ生に繋がる。 自分の携帯を取り出すと、地図機能を開く。 それをオンにすると、首元でカチッと音がした。 「…怖…」 「…お前、単純バカだな。」 「なっ!!…っるせ!」 「まんまと挑発に乗りやがって。」 食い終わった魚の骨を火に投げ入れながら立ち上がった男は、そんな台詞を吐きながら俺の頭をグシャッと撫でた。
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