2636人が本棚に入れています
本棚に追加
ゾクリとした。
その躊躇なしの行動に。
冷徹ともいえる目をした人間に。
「…大丈夫か。」
「……………」
思いっきり吐いてしまった俺を気遣って、背中を撫でているこの男がまた遠く感じた。
吐き気がおさまり、男を見た。
男は俺を見返し、暫く黙っていた。が。
「…生きているものを簡単に殺せる神経が理解不能。」
「…!!」
「そんな目で俺を見ているけどさ。
店で売られている物だって同じ事されているんだ。見ていないから食えるのであって、見たから食えないなんておかしいぞ。」
「…分かってる。」
「この魚も貝も同じ生き物。この鶏だって同じ。
それによって人間は生きているんだ。生き物を殺して生きる、それが食物連鎖ってやつ。」
「…だから分かってるって!」
「分かっているならいい。…お前にはさせないさ。」
「…え?」
「こんなことは俺と一緒にいる間は俺に任せろ。
…誰だって嫌だよな。魚と鶏じゃ、なんとなく違うしな。」
「……………」
「落ち着いたんだったら出発だ。長居することはない。とりあえず戻ってこいつをどうにかしよう。」
…至って冷静に、淡々と話すこの男。
分かっていてもできない。でも、やらなければ、このサバイバルで生き残れない。
そんなの、重々承知だ。
移動しながらそんなことを考えているときだった。
「悠馬くん!!…悠馬くん!!どこにいるんだ!出てこい!帰って来い!悠馬ぁぁぁ!」
最初のコメントを投稿しよう!