未知の恐怖

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拠点に戻ると、悠馬は一目散に海へ入った。 頭から浸かり、数秒経って姿を見せる。それを何度も繰り返し、返り血を洗っているように見えた。 そして、自分の手を見つめ、ギュッと拳を作る。 それがなんとも言えない光景で。 「…悠馬。なんで一人で戦う?」 「は?」 「俺も戦えるから。」 「…嘘つけ。震えてるの見えてたぞ。」 「…っ!……戦えるから!」 「いいんだよ。お前は今日みたいに囮になっとけ。」 「……は?………囮ってなんだよ?」 「……………」 「…あっ!そういえばお前が消えたあと、まっすぐ敵が俺のとこに… お前!そういうことかよ!ふざけんな!最初に言えよチクショー!…笑ってんなよ!」 着替えて戻ってきた悠馬に協力を申し出ると、とんでもない事実が判明して怒りが爆発してしまった。 しかし、その怒りを笑って受け流す悠馬。 それからは魚を捌いて干物を作る作業。 理由は「日持ちするから」だそうだ。 サザエやアワビ等も同じようにした。 そして鞄から兎を二羽取り出す。 「お前は向こういってろ。」 「……いや、ここにいる。」 「また吐くぞ。」 「吐いてもいい。…甘えをなくさないと。」 「……………」 「…分かってる。自分で応募した以上、どんな過酷になろうが自分の責任になるゲームだ。 何もできない足手まといのままじゃ生き残れない。 生きるためには甘えを捨てなければいけない。悠馬を見て気づいた。」 「……………」 「いや、本当は最初から分かってたんだ。 応募したのも甘い言葉に誘惑されたんだ。楽になりたいって甘えからだ。 だから小さなことから始める。…俺、まだ見るだけしかできないけど、そのうち自分が捌けるようになるんだ。…魚も捌けたし。」
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