未知の恐怖

33/39
前へ
/502ページ
次へ
そうだ。俺は甘えていた。 まずは認めること。そして改善していく努力をすること。 思ったことを口に出すと、頭に軽い衝撃。 ポンポンと叩く優しい手の温もり。 「真鍋はいくつだ?」 「…24、だけど。」 「そうか。」 それからガシガシと乱暴に頭を撫でられると、一言「いくぞ」と言った。 今時、兎はペットとしても人気がある。 小学校の飼育小屋にもいたし、慣れ親しんだ可愛い生き物との認識が高い。 それが首を跳ねられ、毛皮を剥がれ、ただの"肉"になっていく様を黙って見ていた。 「…食う前、いただきますと言うだろ。 野菜だろうが動物だろうが、それは生きているものだ。それを殺して人間は食う。 いただきますってのは、すべての命に感謝する言葉だそうだ。」 「……………」 「毎回の食事前、必ず言っていけ。俺もそうしてる。…ほら、もう泣くなよ。」 鶏の首を跳ねた姿を見たからだろうか。吐くことはなかった。 でも涙が止まらなかった。 悠馬が小さな声で「優しい奴」と呟いた。 それが嬉しくもあり悲しくもあった。 「今度の配給まで今日の獲物でもつだろう。貴重な蛋白源だからしっかり食えよ。」 「豪華だな。」 「今日だけだ。頑張ったご褒美。」 「…俺はガキかよ…」 「俺よりガキだ。」 サザエのつぼ焼き、アワビステーキ、煮魚、兎の照り焼き。 普通の生活でも、こんな料理を口にしたことはない。 それくらいの高級料理を悠馬は作ってくれた。 手をパン!と鳴らせ、頭を下げながら「いただきます!」と叫んだ後、夢中で食った。
/502ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2636人が本棚に入れています
本棚に追加