大切なもの、いや、大切になったもの

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「よし、ここにしよう。」 思った通り。 島の地質から言えば、岩の多いのは必須。 しかし、大麻や花が生息する土が豊かな場所もある。 そこには恐らく小さすぎず大きすぎずの開けた場所がある。 背後は壁のような崖に守られ、全体は背のある木と葦に囲まれ、中に入らなければ気付かれないような絶好の場所。 所々にある岩で予期せぬ襲撃から身を隠しつつ闘えるし、みんなが眠れるようなスペースと目印になるものもある。 入り口でレーダー探知ギリギリの100m。 敵が来たとして、数がいることは中に入らなければ気付かれず、こちらも余裕をもって行動できる広さがある。 移動しながら先に言っていたメリットを話すと、どうやら納得してくれたようで。 同じ戦車にいた奴が後方の戦車にいる奴に、内容を教えて共有するという手際だ。 「とりあえず戦車は壁に寄せて、そこらの葉で隠しておこう。その間に整地する。 丁度いい。ここで分けるぞ。そっちは戦車、俺らは整地、お前らは飯だ。」 災害時、円滑に救出を行うためにやらなければならないものの一つに、たくさんの人を纏めることが必須になるときがある。 得意分野ではないが、マニュアルで読んだ。 "パニックにならせない" "緊急時は語尾を強く" そして "自分が落ち着く" 人一倍冷静であれと上官から強く言われたものだ。 それが今役立っているのか分からないが、俺の指示に誰一人文句も言わずに従っているところを見れば、俺はこの小さなレジスタンスのリーダー的立場になったようだ。 手分けした作業をスムーズに終え、円になって食事を囲む。 そしてこれからの行動を伝えた。
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