大切なもの、いや、大切になったもの

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「前田」と呼び掛ける。 こいつはボウガンで俺を襲った奴だ。 「お前は色々と知ってそうだ。お前も早くから管理本部にメール出来ることに気付いてただろ。」 「…早くかは分からないけど、気付いたのは半月経った頃だった。」 「…上出来。」 俺や神園はすぐに気付いたため、何かと有効に使ってきた。しかし、それに気付いたものは少ない。 それくらい一方的な報告メール。 ましてや、チェーンメールや詐欺メールをスルーするのが当然の現代人。一見広告メールのようなそれは、当然見るだけに留まる。 「ならお前が一番情報があるだろう。二弾目のルール、詳しく聞かせてくれ。どんな些細なものでもいい。」 「…些細なもの… 例えば、休むときの姿勢とか?」 「ああ。そういうもの。」 「座るっていうのがどこまでか聞いた。地面と背中が45度より高い位置が"座る"ってことだ。だから俺は、何かを座椅子みたいに背凭れにして眠っている。 あとは、どこから定住になるか。休む場所が半径30m以内に二日連続で眠ると定住とみなされ処刑される。」 「…なるほど。他は。」 「あまり……っていうか、俺が聞いたことは大体お前が知ってることだったんだよ!だからこれといって情報はねぇし!」 「そうか。他にも誰か知っていることはあるか。」 俺の問いに全員が無言。 ということは、今ある情報は全員が共有している。 それならば。 「…よし。役割を決めるぞ。 まず、島を歩き回って他の人間を捜す班。 これは人を選別する目がある奴、そして出来れば二弾目のメンバーが適任だ。 次に、管理本部入り口の捜索班。 処刑人が出てくる坑道入り口でもいい。管理本部に繋がると思われる場所を探す。 そして、この拠点を守る班。 周囲1km圏内を巡回し、場合によっては交戦することになるだろうが。 …全部責任のあるものだ。どうでもいい駒などない。全員で協力し、全員で帰る。」
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