大切なもの、いや、大切になったもの

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何度も繰り返すことで明確な目標を定めさせ、そして自分の存在意識を高めさせる。 これは離反者や反逆者の確率を低くする点で有効だ。 「なぁ悠馬。とりあえず自己紹介が先じゃね?」 「……………」 「お前だけが全員の名前覚えててもダメじゃん。みんなにも覚えてもらわないと。」 「……お前、明日飯抜き。」 「何でだよ!自分が忘れてたからって八つ当たりか!」 「……その辺は適当にお前が仕切れよ。」 「ホント、少し抜けてるとこあるんだから!」 「言い方。お前は俺の彼女かよ。」 「要らねぇし!こんな男は!」 …なぜこいつとしゃべると笑いが起きるのか。 それも仲間意識を高めるためには有効手段であり。 …解せないが。 だが、こいつは何かと俺を助けてくれる。 欲しいと思った言葉 欲しいと思った態度 空気を読んだり、そう思えばしつこくなったり 神園がいたなら恐らくすべて任せていたであろう"仲間"とのコミュニケーションは、作り笑顔のない真鍋が請け負っている感じだ。 …こいつは裏がないとみんなが分かっている。 「真鍋。自己紹介を終わらせて役割分担を。 みんなで話し合って決めるんだ。ずっと同じでもいいし、ローテで回してもいい。そこも話し合え。」 「悠馬は?」 「俺は拠点を中心に動く。仲間捜しも入り口探しも拠点守備も全部回るつもりだ。 ついでにアイテムも手に入れて、攻守共に万全にする。」 「…また一人で背負う。」 「違うから。とにかく俺の言う通りにしてくれ。考えがあるから。」 「…了解。じゃ、みんな。一人ずつ名前と年齢言っていこうよ。」 役割分担が済むと、幾通りも考えたこれからの行動を頭で纏め、円の中心で語り始めた。
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