大切なもの、いや、大切になったもの

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《悠馬。ちょっといい?》 考えていると、突然のメール。 しかし、真鍋がこういうメールを送るなんて今までになく、少々妙に思いながら返信した。 《どうした》 《怪我している人を見付けたんだけど》 《名前は》 《近藤なぎさって言ってるけど?》 「……!」 ドクン!と心臓が高鳴った。 が、すぐに深呼吸し、冷静さを保つ。 近藤なぎさ 高校時代に付き合っていた元彼女 なぜここに… 《居場所は》 《そこから北側。そっちに歩いてるとこ》 すぐにレーダーで確認すると、報告通り北側からゆっくり近づいてくるポインターが二つ。 あと30mほどで見える位置だ。 「上遠野。少しここを任せるぞ。」 「え、どこ行くんだよ。」 「真鍋からメールが来た。怪我人を連れてくると言っている。ちょっと見てくる。」 現在12:47 振り分けた三つの班が昼食を摂りに拠点に集まっている時間帯だった。 北側に歩を進め、数m。 背の高い葦の間から、肩を貸しながら歩いてくる影を見付けた。 瞬間、 (…クソ!やられた!!!) そう思って機関銃を構えて叫んだ。 「真鍋!!そいつから離れろ!!!」 「……え?」 …保健機構は国の運営。 つまり、参加者の人生すべて調べるのは容易い。 現在も、過去も。 俺は"怪我人"が口角を上げたのを見逃さなかった。
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