大切なもの、いや、大切になったもの

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死神は処刑人が殺したんじゃないのか? 俺が見てきた死神は、処刑人が… いや、確実な死を見てはいない。 (…先入観か!) ギリッと奥歯を噛んだ。 銃声悲鳴。それらを聞いたが、死体は見ていない。 銃声のあとの悲鳴は聞こえなかったから、もう死んだと思っていた。 ここの処刑人は意外と丁寧に作業をする。 処刑人が行ったあと、または参加者が殺した死体、それらが放置されることはない。 ゲーム開始直後、あれだけの死体ができたのだ。移動しているときに一つや二つの死体を見てもいいはず。 それがないということは、処刑人が死体を運んでいるという勝手な先入観を持っていた。 だからこそ、だ。 死神も、処刑したあとに処理している、と。 …やられた。 まんまと罠に嵌まっていた自分に気づく。 「…目的は何だよ津田愛美。」 「言う前に全員銃を下ろしてくれない?」 「だったらそいつを解放しろ。」 「銃が先よ。」 こちらは多勢だ。しかし、人質を捕られていては分が悪い。 少し間をおき、銃を下げるように身振りする。 「あんた以外、下がらせて。5歩でいいわ。」 「真鍋が先だ。」 「……いいわ。ほら、行きなさい。」 解放された真鍋は、半泣きになりながら俺の許にダッシュで来た。すぐに自分の背後に真鍋を隠すと、他のみんなには5歩下がらせる。
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