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そこで不敵な笑みを浮かべた津田愛美。
それを無表情で観察する。
「…あんたのせいだと思うのよね。」
「何が。」
「神園卓也が私を疑い始めたのって。」
「お前は最初から怪しかったさ。俺も神園も気づいていた。だから警戒してたんだ。」
「ま、今となってはどうでもいいけど、あんたたちのせいで私は殺されるかもしれない。
ただ、手柄を立てればもしかしたら…なんて例もあるらしいから、あんたか神園卓也を殺せばいいと思って。」
「…俺か神園を殺れば、お前は必ず殺される。」
「は?何の根拠があってそんなこと言ってるの?」
「知っているだろ。俺も神園もレアの部類としてここに強制参加だ。お前たちのデータを仕上げるために必要なサンプルだろ。
限界に近い状態で欲を出さずにいられるかを実験されているのは俺と神園だけだからな。」
「!」
「ここにいる大半は一億円と言う欲に目が眩んだ人間だろ。そいつらの場合、どれだけ欲に溺れていくかの実験。
保健機構、ね。なるほど。脳内物質の変化に伴う人間の行動とその経過。制限を課された人間の」
「そこまで分かってるんだ?すごいすごい!」
津田愛美の右手が大きく下から上に。
同時に何かが俺に向かって飛んできた。
(…!避けたらダメだ!)
身体が即座に反応した。
これを避ければ背後の仲間に当たる。
肩から斜め掛けしていた機関銃のベルトに親指を掛け、それをピンと張った。
見切れるほどの速度。瞬時の判断で的に"当てさせた"それはサバイバルナイフ。
そして集中していた意識は、向かってくる津田愛美の体当たり攻撃を反射的に避ける。
「二人?結構!だったら一人を殺しても大丈夫だってことよね!あんた、いい加減ウザイのよ!」
「……………」
右、右、左。
膝や拳が向かってくるが、それを見切って後退しながらギリギリで交わしていく。
女にしては出来る方だろうが…
俺の相手じゃない。
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