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悠馬くんは少し目を細め、そして首を横に振った。
「神園。…出ていってくれ。」
「なぜ?」
「岳を連れて出ていってくれ。頼む。」
…それは、いまだに側を離れない、動かなくなった彼が原因だろう。
人を殺したことを怖がったということがきっかけで出ていった時と同じ。
一緒にいれば恐怖を与える存在になるし、守れないのに一緒にいれない、と。
「…やっとの思いでここまで来たのに追い出すの?」
「悪い。でも、」
「悠馬くん。岳は君が思っている岳とはもう違うよ。」
「……………」
「君が守らなくても僕が守る。それでいいんじゃない?しかも、岳は君が思っているよりずっと逞しい。」
「……知ってる。」
「だったらなんで?」
「……………」
口を閉ざしてしまった悠馬くん。
そこに岳が一歩前に出る。
手を前に出して、悠馬くんの声のする方へ。
それを無言で眺めていた悠馬くん。
すると、小石に体勢を崩し、前につんのめった岳。
僕は敢えて動かず、手も差し伸べない。
なぜなら、反射神経が優れ、岳を気にかける存在が動くことを知っているから。
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