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会いたかった家族にやっと会えた。
そんな表情で岳を見、そして、その頬に手を伸ばした悠馬くん。
しかし、岳を一撫でした瞬間、パッっと離れた。
返り血を浴びたその赤い液体が、岳の頬に付いたのを見たからだろう。
どうやら岳もその事に気付いたらしい。
離された手をすぐに握り締めた。
「…僕と一緒だ。」
「……………」
「必死で守ってきた手。」
「……………」
「悠馬くん。僕は目が見えない。だから助けてよ。悠馬くんのことは僕が助けるから。」
「……………」
「それじゃ、ダメ?」
「…お、俺は…守りたいと願った…ものさえ…こうして守れなかった…」
「だから僕がいるんでしょ。卓也くんも竜くんもいる。
気配しか分からないけど、悠馬くんが一生懸命集めた仲間がここにいるんでしょ?」
「…岳…」
「みんなで守るんだよ。みんなで戦うんだよ。そのための仲間じゃない?
死ぬことは、この島に来たときに思ったこと。そして、覚悟した人たちがここに集まってるんじゃないの?」
…本当に成長した。
ある意味賭けでもあった。
我を忘れたように泣いた悠馬くんに必要なもの、もしくは我を取り戻せるもの。
そのきっかけが何かを探る前に思い付いたのが岳の存在だった。
前以て言った訳じゃない。
しかし岳は見事に僕の希望通りの行動を起こしてくれた。
「…大丈夫だよ。みんな、悠馬くんのせいじゃないって分かってるから。…だから、僕も悠馬くんの近くにいさせてよ。」
「……………」
その問いに、悠馬くんは答えなかった。
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