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この"真鍋"くん。
悠馬くんにとって、きっと岳と同じ。
どこでどうやって知り合ったか分からないけど、悠馬くんは真鍋くんを信頼していたはずだ。
自分のことを全部話すほど。
そして、説得に必要な信頼を真鍋くんに託すほど。
管理本部を潰す。
それを明確にし、そのために作っていった仲間は、きっと悠馬くんが思っている以上に悠馬くんを信頼している。
…恐らく、悠馬くんは行動で示したはずだ。
真鍋くんの遺体をずっと見ながら男の話を聞いていた悠馬くんが、ゆっくりと立ち上がった。
そして、僕に目を向けた。
「…神園。」
「ん?」
「…俺を一発殴ってくれ。」
「……………」
どこか決意をした目。
力が宿っていた。
そこに、嬉しい誤算が乱入。
「え、なにそれ!楽しそう!僕も悠馬くん殴りたい!」
「は?岳、お前な…」
「じゃあ俺も。思いっきりガツンといくか。」
「…西岡、テメェ…」
「この際、全員殴ればいいんじゃね?」
「いや、さすがにそれはちょっと、」
タジタジになる悠馬くん。
それを見て周りが笑う。
油断している隙に、横から僕が拳を振るった。
「…ってぇー!不意打ちは卑怯だぞ!」
「悠馬くんが殴れって言ったんじゃないか。僕はその通りにしただけだよ。」
「…おし。お前も一発殴らせろ。」
「やだよ。なんでそうなるの。」
その瞬間、さっき以上の笑いが起こった。
悠馬くんを見ると、俯きながら横目で周りを確認していた。それから僕を見て、僕は小さく頷いた。
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