2636人が本棚に入れています
本棚に追加
歩いて5分ほどのところ。
密集した木々から光が差す。
パッと視界が開けたそこには、綺麗な花がたくさん咲いていた。
「…お前らはここで少し休んでてくれ。結構長旅だっただろ。」
「長旅って。移動距離はそこまでないとは思うけどね。」
「50kmほど歩けば立派な長旅だ。岳の疲れは半端ない。少し休んでいてくれよ。」
静かに地面へ真鍋くんを降ろすと、悠馬くんは10mほど先で穴を掘り始めた。
だが、誰ともなく悠馬くんに近づき、共に穴を掘り始める。
「…俺がお前らと離れた三日後くらいだったか。こいつと初めて会った。」
「「「……………」」」
「…俺は警戒心丸出しに近づいた。他者を寄せ付けない空気も纏っていたし、ぶっきらぼうに切り捨てたし、殺すと言って脅した。」
「「「……………」」」
「気が弱くて、キャンキャン吠えまくる小型犬みたいだって思った。
…そんな俺の後を必死に追いかけてきた。」
出会った頃の記憶。
それを共有して欲しいという願い。
岳がさっき言った言葉だ。
悠馬くんをこんなに素直にさせたのは。
「はっきり言って足手まとい。心の強さもなければ体力もないし武器も体術も知識も知恵もねぇ。
けど、一つだけ願いがあった。
こいつ、ゲームに参加した理由、母親が病気で金がないからだった。そのために必死で生きていた。
…出会って翌日、俺は人を殺した。そんな俺にこいつは何て言ったと思う?
……"ありがとな"って。そう言ったんだ。
煩くてバカで臆病な奴だった。…でも、俺はその一言が涙が出そうなくらい嬉しかった。」
最初のコメントを投稿しよう!