2636人が本棚に入れています
本棚に追加
沈黙が辺りを包んだ。
悠馬くん以外見えなかった近い将来を突き付けられて、少々戸惑っているんだろう。
俯く者、焦りの表情を隠せない者、そして前を向いて現実を受け止めている者。
みんなを観察しながら、誰かの口が開くのを待つ。
今、僕から発言することは無意味。
悠馬くんが築いてきたものが崩れる。
…自分たちで考えて決めた行動に、後悔を加えることになりかねないからだ。
その沈黙を破ったのは、やはり羽田くんだった。
しかも、人間心理を知っているのかと思える内容で、僕は少し驚きを隠せなかった。
「しかしまぁ、あれだな!藤本ってあんな風に笑うんだな!」
「………え?」
「そこのチビ、岳だっけ?藤本は岳と話すとよく笑う。真鍋と一緒にいたときも笑ってたけど、なんか違うかな!」
「…どういう風に?」
「優しいっていうか、腹の底から笑ってるっていうか。いつも岳を目で追ってる感じがする。」
「…あー、それ。俺も思った。俺の前でも笑ったところなんて見たことなかったし。」
「そりゃそうでしょ。竜くんは悠馬くんとそんなに会話しなかったし、邪魔者もいたことだしね。
多分、直に岳の声を聞いて嬉しいんじゃないかな。この子、ストレスで声が出なかったから。
目が見えないし、声も出ない。そんな中でのサバイバルは生き残れない。
同情もあったと思う。でも悠馬くんは最初から決めていた。岳を見捨てないって。それなりの愛情を注いでいた。
友人のように、兄弟のように、一生懸命。」
「…僕、卓也くんは嫌いだけど、悠馬くんは好きだし。」
「あらっ?またフラれた!」
最初のコメントを投稿しよう!