2637人が本棚に入れています
本棚に追加
でも、そこはやはり悠馬くんだ。
「課題が見えたな。」
「え?」
「岳。お前は耳がいい。だから声の発信源で距離が分かるようになれ。西岡。相手がよく見えているのは分かるが、お前は攻撃が粗削りすぎる。もう少し無駄な動きを省け。
訓練次第で簡単に出来るはずだ。」
「え、なんで俺らだけだよ。卓也は。」
「バカ。相手は警官だぞ。組手すりゃ俺より強い。」
「…マジかよ。」
「ははっ!なんかごめんね?悠馬くん。」
「今やれば俺の方が強いかもしれないが。」
「はい?どこから来るわけ?その自信。」
「さぁ。」
「ならやってみる?」
「…ブハッ!卓也でもムキになることあるんだな!知らなかった!」
竜くんにも岳にも笑われてしまった。
負けず嫌いな性格が思わず出てきてしまったようだ。
目の前の悠馬くんはニヤニヤしてるし、そんな自分がおかしくなってみんなで笑った。
…ああ。なんか、やっとこの空気になった。
やっと悠馬くんを捜し出せた。そう実感した。
悠馬くんが出ていったのは自分のせいだと責め続けていた二人。そして、自分で捜して見つけたことで生まれた安堵。
自分に責任を感じて、三人でいてもここまで柔らかい雰囲気になったことはなかった。
悠馬くんが目の前にいる今、二人の心が大きく変化していることに気づいた。
"悠馬くんのために何かしたい"
常に他人のために動いてきた悠馬くんだからこそ、二人の心をそう動かしているのだ。
管理本部への襲撃。これを聞いたら少し前の竜くんなんて猛反対していただろう。
岳だって恐怖で自分を内に閉じ込めていたはず。
それをせず、文句も言わず、ただついていくという意思を示した二人。
これはその証明だ。
最初のコメントを投稿しよう!