試練

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「出てこいよ。いつまで盗み見する気だ。」 和やかな雰囲気に包まれたとき、不意に悠馬くんが背後に声をかけた。 そこから出てきたのは、羽田くんと久木田くん。 「…いつから気づいてた?」 「いつからって…最初からだ。お前らもこいつらと仲良くなってくれよ。」 「いやいやいや!そこはどうでもいい! お前、警官って本当か?」 「……そうだけど。」 「何だってこんなとこに警官が!」 「理由は悠馬くんと似たようなもの。でも、僕の仕事がここで関係ある?」 「…あ、全くないな。」 「じゃ、忘れてよ。ただの仲間だよ。 …因みに海上保安官もここにいるけどね。」 「…元、な。」 「えっ!お前かよ!何で教えてくれなかったんだよ!」 「関係ないだろ。」 「言い方!」 「…羽田。お前、なんか真鍋に似てきてるぞ。」 「お前なんかより真鍋の方が信頼できてたし、お前よりあいつと行動してたからだろ。」 出てきた二人は結構口が達者らしい。 しかし、悠馬くんに物怖じしないところを見れば、かなりの関係が築けていると思ってもいいだろう。 …いや、真鍋くんの置き土産か。 「なぁ。俺も強くなりたい。護身術とか相手を沈めるための方法を教えてくれよ。」 「俺も。」 「……………」 「あの甲冑のときも斧の奴も、お前が前にいた。…てか、誰も前にいこうとしなかった。 いつもお前が先頭で、真鍋がお前に続いてた。 真鍋がいなくなったんだ。俺に代わりをさせてくれよ。」 贖罪か。それとも懺悔か。 しかし、この二人にも責任感と連帯感が芽生えていることに間違いはないだろう。 「俺は優しくなんてないぞ。」 「される覚えもねぇよ。」 「じゃ、頼んだぞ神園。」 「言うと思った。自分がやる風だったくせに。」 「俺は西岡。お前は二人と岳。」 「僕の負担は考えないの?」 「ないな。」 どうやら僕と悠馬くんの会話は、周りを和ませるらしい。 緩んだ表情が包んだこの場に、誰もが絆を感じていただろう。 だが、それを払拭する事件が起こった。
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