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見た限り、岩に隠されていた施錠中扉は鉄。
ならば、砲弾を数発当てさえしたら開くだろう。
悠馬くんは中を気にしているらしいが、処刑人が来る時間や島の形状から言って単純なものだと予想した。
いくつかの細い道はあるかもしれないけど、そこは地図を開けば中心へ向かっているかを判別できるし問題点ではない。
それから、”火山”の判別。
最初の拠点の洞窟で、訓練前の岳の力でも簡単に砕けた地層。
つまり、この島は”シラス台地”と同じだ。
水捌けがよく、崩れやすい。
その理由は、火山灰を撒き散らせているから。
そして、帰還方法。
ヘリを思いつくってことは、管理本部はヘリでこの島に移動してきたと考えられる。もちろん、気を失っていた僕たち参加者も。
「…明日にするか。みんなの意見は。」
『俺らはみんなOKだ。』
即座に連絡入れてきたのは、組み手中の二弾目たち。
「……来い。」
誰にも聞こえないような小さな声で呟いた悠馬くん。
…そうだ。陣地縮小があるイベント前に済ませなければ。
戦いは最小に。しかし、効果は最大に。
「…俺もいいぜ。短い間でも、少しは役に立てそうなくらいの強さは身につけたつもりだ。
俺だけじゃなく、ここにいる全員が。」
「そうだな。俺もいいよ。」
「僕も。」
「俺も。」
悠馬くんが拳を握った。
…嬉しいだろう。仲間がこんなに一致団結するのを見れば。
僕もほんの数日しかいないのに、こんなにも嬉しいのだから。
そして、みんなが同じ結論に達したのを確認し、視線が僕たちに向けられる。
「…岳。お前は。」
「もちろん行くに決まってるよ。矢も当たるようになったし、声だって距離が分かるようになったし。」
「…西岡。」
「俺はもうお前を裏切ったりしない。見限ったりしない。批難の目を向けない。」
「…ふ。バーカ。……神園。」
「僕にも聞くんだ?」
「聞かねぇよ。お前は俺と心中覚悟だ。」
「げ。僕、女の子がいいな。」
「諦めろ。」
「酷い。」
そんなやり取りに笑った瞬間だった。
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